『ゲド戦記 3 さいはての島へ』

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アーシュラ・K. ル=グウィンの『ゲド戦記』の第3巻は、
『さいはての島へ』というタイトルとなっている。

原題は THE FARTHEST SHORE なので、
「さいはての岸辺」というニュアンスに近いだろうが、
物語全体の地理的構造から言うと、
やはり「島へ」としたほうがわかりやすいと思われる。

さて、今回もまた、この本の内容は、
カバーに示されたような「中学以上」では、
本当に一部しか理解はされないだろうと考えられる。

記述は平易だが、内容は恐ろしく深い。

内容の十全な理解まで考えると、
実際のところは「壮年以上」じゃないかとすら思えてしまう。

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前作の『ゲド戦記 2 こわれた腕環』からは
かなりの歳月が流れたようで、
ゲドはすでに「大賢人」の域にまで達している。

そのゲドと一緒に旅をするのは、
某国の若く聡明な王子であるアレンだ。

彼らが最終的に戦いを挑む存在はクモという名である。

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と、ここまで書けば、この巻がジブリの『ゲド戦記』と
関係があるのが察せられるが、
内容はまったく違う。

なんでああいう話になったのかさっぱり分からないというくらい、
原作と映画は異なっており、
両者は完全に別物と考えたほうが正解だろう。

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『ゲド戦記』は印象的なフレーズなどに付箋をはさんでいくと、
あれよあれよという間にそれが増えてしまうが、
この書では特にその傾向が強く、付箋だらけになってしまった。

壮年以上の読者を対象に、ひとつだけ、挙げておく。

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「わしにはわかるのだ。本当に力といえるもので、持つに値するものは、
たったひとつしかないことが。それは、何かを獲得する力ではなくて、
受け容れる力だ」
<アーシュラ・K. ル=グウィン『ゲド戦記 3 さいはての島へ』(清水真砂子訳)>

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この本を読み解くには、壮年以上の経験が必要であると思われるが、
同時に、ティーンエイジャーの頃に持っていた何かもまた必要であるようだ。

自転車の旅を愛するような仲間に、
強く推したい本である。

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ナマステ。ピース。








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